ご挨拶

こんにちは。cafe「ロジウラのマタハリ 春光乍洩」の店主、美尾りりことTAKEDAこと武田信吾です。
私達は夫婦で、名古屋駅西にある古くからの下町で、小さなカフェを営んでます。
どなたでも、お一人でも仲の良い人同士でも、気軽にのんびりとお茶をしたりお食事が出来る場所を作っております。
ご挨拶代わりに、この店を始めることになったきっかけでもお話しましょう。

私達は学生時代、愛知大学豊橋校舎のモダンジャズ研究会に所属していて、その頃からの付き合いとなります。
お店を始める1年前の2000年、TAKEDAはサラリーマンを退職し、職業訓練校に通っていました。時折、ライブでサックスを吹いてもいました。2001年の3月で職業訓練校を卒業します。さてその後、またどこかの会社に就職しようかどうしようかという感じでした。
私、りりこは名古屋駅西の映画館シネマスコーレの前にある「アジアスーパーシネセンター」という、アジア映画のショップの店長をしておりました。とても楽しい仕事でした。
ところが2001年の4月、非常に私事ですが、妹が突然の自殺で、この世を去りました。それ以来、その年の冬はどことなく気持ちが沈みがちで、人間関係にも仕事にも生活にも、何か行き詰まりのようなものを感じていました。
そんなある日の春、突然TAKEDAが言いました。
「何か一緒にやろうか」と。
私はその案に飛びつきました。
「何かって何?」「2人でお店をやりたいなと思って」

それまでの私達の間に、「一緒にお店をやる」という案がなかったことはないけれど、それが具体性を持ったのは初めてのことでした。私達には飲食店で仕事をした経験はありません。そんな私達でも出来るのでしょうか・・・。
しかし、職業訓練校という猶予期間の終了を迎えたTAKEDAと私は、そこからは驚くべき早さで、やりたいことを具体化していきました。そこからの数ヶ月は、毎日どんなお店にするかを話し合い、物件を探し、様々なお店を見に行き、またインテリアについて考え、メニューを考案し、非常に忙しく、そして充実した日々を過ごしていました。
そしてなんと4ヶ月! 
開店前にもっと時間をかけるつもりが、結局は「お店をやろうか」と言ってからたったの4ヶ月で、お店を開店してしまいました。
開店日は、2001年7月20日。
7月20日というのは、先に書いた私の亡くなった妹の誕生日にあたる日です。

「ロジウラのマタハリ 春光乍洩」という店名。
「春光乍洩」は、監督/ウォン・カーウァイ、出演/レスリー・チャン、トニー・レオンの映画「ブエノスアイレス」の原題です。
この映画は、私達、特に私の人生を変えたものだと思っているので、このタイトルを是非にとも店名に入れようと思っていました。
それまでアジア映画を殆ど見たことのなかった私が、「ブエノスアイレス」という映画に出会い、狂おしいほどにその映画に恋してしまったのです。その後、「快楽有限公司」という名のHPを立ち上げました。そのHPのおかげで出会った素晴らしい友人がどれほど多くいることでしょうか。また、それは私だけではありませんでした。音楽のページも作っていて、それを通じて様々なミュージシャンの方々に出会うことにもなりました。その方たちの出会いの中で、TAKEDAはフリー・インプロビゼーションというジャンルで、ライブに出演する機会を多く持つことが出来ました。
この映画に出会わず、HPを作っていなかったら、出会ってない人もいっぱいいたし、経験してないこともいっぱいあったかもしれません・・・。そう思い、ターニングポイントとなったこの映画のタイトルを入れたのでした。
とは言え、「春光乍洩」では覚えにくいし、何しろ広東語だから発音もしにくいです。
それで、路地裏のような場所にあることから「ロジウラのマタハリ」というのを考えました。「マタハリ」とは、インドネシア語で「太陽」の意味です。
ちょっと薄暗い路地裏にあるけれど、太陽のような暖かい場所になれるように、とそう思ってこの店名を付けたのです。

さて、私達のお店は、穏やかで小さな陽だまりのようなお店になれるでしょうか。
日々、そうでありたいと思いながら、ささやかな毎日を過ごしつつ、このお店で誰かをお待ちしております。